少し愛情を感じはじめている

2011-08-12

 俺はある保険会社に勤務するサラリーマンだ。35歳、独身で、役職は一課の課長だ。
 部長である上司は女性で、門倉涼子と言うアラフォーの美人。名前も似ているが、容姿も米倉涼子にそっくりで俺たちはみんな「米倉さん」と、門倉部長の事を陰では言っているが、面と向かって言うような豪傑や馬鹿はいない。彼女は仕事も出来る代わりに、部下に対しては容赦ない目標や要求を突き付けてきて、平気で「絶対に目標を達成しなさいね。外したら、判ってるわね」と強圧的な部分を持ちあわせているからだ。
 しかし、実は外見や、その毒のある言葉とは別になにかあると上層部からの盾になってくれていることは、全員が知っていることなのだ。10歳は若く見える外見と、強烈な美人なであり、しかも独身なのだから何となく心情的には「米倉さん」のために、と言う気持ちに全員がなっていることは確かなことでもあった。
 しかし、再三言うが、仕事には物凄く厳しい人なのだ。
 そんな「米倉さん」とある時に行きつけの小料理屋でバッタ会った。と言うよりは、出っ食わしたと言った方が良いのかな。
 会社の傍ではないし、誰にも教えたことがない店であり、俺が住んでいるマンションの近くだから誰も知らない訳だ。それなのに、なんで「米倉さん」と、しかもプライベートな時間にあうなんて、いったいなんてこった、と思ったが最早時すでに遅し。俺は動じることもなく「あ、部長、お疲れ様です。珍しいところでお会いしましたね。隣の席、いいですか」と言って、さりげなく「米倉さん」の隣に座った。こうなったら仕方がない。とにかく、旨いものを喰い、旨い酒を飲むことに集中しながら「米倉さん」の御機嫌を損ねない程度に、お相手をさせていただくことにした
 「部長はこの店を以前からご存じだったんですか?」と訊くと「いいえ、先週、この近くに引っ越して来たのよ。だから偶然」などとのたまう。
 まあ、そんな偶然もあるだろう。何も俺の住所を気にして近くに越してくる理由もないわけだしな、と俺は思い「へ〜、私もこのすぐ近くに住んでいます。偶然ですね」と言った。
 「あら、吉村課長もご近所なの。私、前のところは賃貸だったけれど、今度は買ったのよ。それで引っ越して来たって言うわけ、宜しくね」と、素敵な笑顔を俺に向けてグラスを挙げた。俺も「こちらこそ宜しくお願いします」と返して、グラスを「米倉さん」のグラスに軽く当てて乾杯を思わずしてしまった。
 それから何回かこの店で会い、二軒目等にも「ご一緒」させていただくうちに、ある日「米倉さん」は、翌日が完全休日だったこともあり、完璧な酔っ払いになってしまった。
 俺は、「米倉さん」に肩を貸して道を聞きながら送って行った。
 しばらく、と言っても5〜6分のところだったが、新築のマンションがあり、そこの10階だと言うのでエレベーターに押し込んで別れようと思ったら、急に泣きだして「お願い、今日は一人にしないで」といい、俺に抱きついてきた。
 無理に引離すことも考えたが、ちょっと立場上と場所柄を考えて仕方なく、「米倉さん」の部屋に上がり込んだっていうわけ。
 それから先はご想像どおりで、やっちまったって言うことなんだけれど、「米倉さん」はセックスの時には思い切り従順になってしまい、なんでもしてくれる。服を着ている時に若く見える外見は、全裸になっても変わらずに若々しい。本当に米倉涼子を抱いているような錯覚に陥りそうになる。
 そんな「米倉さん」だが、一つ困った事は、そのとめどもないような性欲の強さだ。特に次の日が休みの場合、ほぼ朝まで、或いは朝に近い時間までは寝かしてくれない。
 俺はちょっと遅漏なので、「米倉さん」を何回もいかせて俺だけは射精回数を制限できるから、なんとか要求にこたえられるのだが、そうじゃない奴にはちょっと相手をすることは辛いだろうな。
 とにかく、仕事中の態度とは一変したと言うより、豹変と言う表現は当てはまらいのかも知れないが、感覚的にはまさに豹変してしまう。
 そんな「米倉さん」に、最近少し愛情を感じはじめている俺だった。

関連ページ